塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

ロスト・イン・トランスレーション

遅ればせながら観た。日本語がわかるにもかかわらず、とりまく会話や看板がひどい違和感をもって迫ってくる感じを少しだけ感じる。自分が街なかを歩く時常にある圧迫感、巨大で見知らぬものに取り巻かれている不快感に通じるもの。スカーレット・ヨハンソンが内側でもがく娘を美しく見せていた。いらだつビル・マーレーは、随所に滑稽味をちりばめ、笑わせながらも、その細かないらだちの波動に感情移入することを容易にする。彼女や彼が乗る東京のタクシーの窓に流れるネオン。子どもの頃、親戚の家に行った帰りのタクシーの窓に流れる街灯りに、この世に生きる不安を膨らませた、あの感触を思い出した。DVDの映画予告編にもっともロマンチックな云々と宣伝文句(どこかの新聞の評だ。)が流れていたが、そういうフレーズはわたしの受けた印象とはまるで違う。ロマンチックとか恋愛的なものはあまりかんじられなかった。世界との齟齬。ぐらつく足場。最後に流れるはっぴいえんどの曲「風を集めて」が微かな救い。この作品の中で不思議な位相にそっと置かれる。それにしてもあらためてホソノさんほんとにいい仕事(とても昔のだけど)。(やっぱり「はっぴいえんど」のCDは持ってた方がいいかな。たしかホソノボックスてのも出ていたな。)メゾン・ド・ヒミコのときの音楽も、ホソノさんの音楽がいい意味でのデウス・エクス・マキナ的なあらわれ方だったなぁ。ソフィア・コッポラはどういう経緯でホソノさんを使ったのでしょうね。