塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

2022.12.27火 @LOG  留美ととりふね 曲目解題 

忘備も兼ねて長文。よろしければ読んでくだっせ。
曲目解題も。
今井大蛇丸企画LOG年末ライヴ終了。おもいのほかお客がたくさんきてくださり、(チャーリーさんも来てくれた!)ずいぶん緊張しましたが、終わり良ければ総て良し、と。もしくはまさに「能事畢矣/のうじおわれり」、と。
留美ととりふねで6曲やり、オロチマルズに3曲参加(これは当日会場練習のみでしたどきどき)。
12月に入ってから今井さんに声をかけていただいたのだけれど、留美さんの手腕でサスペンデッドだった新曲や、フリーで歌って歌詞のみあって曲が定まっていなかった新曲を、形にすることができました。今年はかさいさんも留美さんも、あにまるずやF.H.C.のライヴ・ツアーで忙しく、かさいさんとリアルで会うのはなんと2020.3の還暦ライヴ以来だったという。
F.H.C.生で聴くのひさびさ。黒崎はくあさんとは2度目(だが塚原さんとのユニットは初)。宮本尚さんとははじめまして。みなテイスト、形態違うけれど、今井さん企画であって、なんとなく統一感もあり。
ライヴ終わり、少し時間があってオイちゃん、奥山さんや長津さんともちょっぴりお話できてよかったです。 けんちんうまうま。
2022.12.27火 @LOG
留美ととりふね 曲目解題
❶字海~Tabula rasa 
昔、「字海」という漢和辞典が家にあった。
円城塔の『文字渦』読後に、ディスプレイ上の文字を海として書いた詞。タブラ・ラサラテン語で「何も刻まれていない石板」「白紙」の意。1月に留美さんと作りかけていたのを仕上げた。
❷月の光 詩 中原中也
この詩、実は昔から読むたびに曲をつけて読んでいた。チルシスとアマントがかわいくて。9月に三島ゆうき氏の助けで形にしたもの。『月の光 二』も加え、このたびは留美さんアプローチで。
❸らいふいんでくす
10月、資料館で若松由紀枝さんの踊りのバックでアカペラ、メロディフリーで歌ったものを曲として固定した。民俗学者・国文学者の折口信夫が枕詞のことを「らいふいんでくす」と名付けた。ふるめの言葉や教科書によく掲載される折口信夫の短歌「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり (釈迢空)」も織り込んだ。本歌取りである。枕詞や古語、音も意味の広がりもすてきなので、つかって再生したいの。
❹さあかす
これは2020のライブでもやった曲。別役実の『空中ブランコのりのキキ』をモチーフにしたものだが、フェリーニの『道化師』のイメージも入っているかな。曲の流れまとまりとしてはすごく気に入っている。ただし高音部分をファルセットに切り替えるか、地声で頑張るかは運次第。ここのところ悪いものの分量が減って声がでるようになっており練習では地声で出たが、本番は緊張しており、むりっぽかった。
❺漏刻
留美さんのギターの曲が先にあって、歌詞をのせたもの。「漏刻」は留美さんのもともとのタイトルで、古い時代の水時計。その言葉とロマンティックなメロディを受けて、リラダンの『未来のイヴ』をモチーフにして古典アンドロイド&ご主人様的な歌詞を書いた。全体のメロもかちっと定まっていないが、とくに中間部はギターを聞きながらフリーでメロを固定せずに歌っている。オロチマルズの「ディ・プッペン・シュピーレ」とも重なるテーマ。人間と人形(ロボット・アンドロイド)。は意外とテーマとしてはホラー味のあるエロタナである。ホフマン『砂男』(コッペリア)とかね。
❻空にはお月さま
みんなのうた別役実作詞・宇野誠一郎作曲。別役実アイテム満載の歌詞が楽しい。(なら、歌詞みないで覚えろよっ。)9月に三島氏とやった曲を今回は留美さんと。留美さんがベースっぽく弾くので、引っ張られそうになる。笑。
オロチマルズに参加した曲
★ディ・プッペン・シュピーレ(人形芝居)
はじめて今井さんの曲に詞をのせた曲。15年以上?前に、シアターラグ203の水曜劇、村松さん作、福村マリさんのお芝居のために作られた。ラグでライヴもやったっけ。遠い目。つい歌の前に妙な踊りを踊ってしまった。ほんとはいつも踊りたい。
今回はあの形態(第3形態?)で歌えて喜んだ。間奏、列車のSEにのせて読んだのは、宮澤賢治の『青森挽歌』の一部。
アラバマ・ソング
ずいぶん前のスマロケで、今井さんとやったことがあったような。くるとわいるだもん。いいよね。今回のアレンジかっこよく、のりのりで歌えた。
 
 

字海/tabula rasa

字海/tabula rasa 詞・曲とりふね



display 渺渺と

文字の海みちる真夜中

 

blue moon 嫋嫋と

裳裾ひき撫でる波頭

 

はるかにみえる

あの浮き島は

この海にただひとつ

のこされた

tabula rasa

 

剥がれる意味のlayers

粉飾と偽装のcoda

騒がしいな外は

決して入れるな中に

 

満面の笑みでslayers

鈍器で理想の乱打

騒がしいな外は

今はまだだ まだ

 

うごめくものを

かたちのないものを

溺死に誘う

文字の海をわけて

 

およぎつきたい

あの浮き島に

この海にただひとつ

のこされた

tabula rasa






Dm Dm6

Gm A

 

Dm Dm6

Gm A Gm Dm Gm Dm

 

Gm F

Gm F

Gm F

A

G Dm G Dm

 

F F# 

F F#

Dm G

Dm G

 

F F# 

F F#

Dm G

C G A A A A

 

Dm Dm6

Gm A

Dm Dm6

Gm A

 

Gm F

Gm F

Gm F

A

G Dm G Dm




石井則仁 がらんどうの庭 朽ちてなお 2021.9.28(火)@Agt 留美ととりふね 歌詞 解題

石井則仁 がらんどうの庭 朽ちてなお 2021.9.28(火) 留美ととりふね 歌詞

 

石井さんの屍に擬せられた身体を斜め後ろから凝視しつつ、留美さんのギターを聴きつつ、メロディーある程度可変に4曲。

留美さんとはシンメトリに座った。

石井さんの身体の形象と蠢きがメインと考えたので

当初、言葉やメロディが過剰なのではないかと危惧した。

言葉やメロディはもともと過剰なものだから。

だが、歌う以上その過剰さは不可避なのである…。

観ている方の感覚のなかで

それなりにあたらしいミクスチャとなっていればよいのだが。

 

①うつうつつ 空現 

この度のオファいただいたのち作った。留美さんのギターで、メロディは決まっていない。梁塵秘抄の蝸牛の部分は歌っていない。

②茂みの浮揚 すでに何度か演奏した曲。

折口信夫の「死者の書」冒頭部分のイメージでだいぶ前に作った曲。

③化野(あだしの)その弐 

これは歌詞だけがオファより先にあって、出演決まってから留美さんのギターがついた。実は、「化野その壱」が存在している。30年以上前に、故酒井君の曲とりふねの詞であった。バンド「とりふね」で一度演奏したことがあったように思う。「うるはしの あだしのへ こよや君 花の香(か)に みちびかれ」というような歌詞だった。その壱はロマンティックなメロディだったが「化野その弐」は思いのほかブルースぽくなったかな。

④天界(ヴァルハラ)の花 

すでに何度か演奏した曲。舞踏との兼ね合いを考え、歌ったのは2番のみ。薔薇の花の展示のコンセプトにも合うように思ったので、おわりに歌った。



★うつうつつ(空現)詞とりふね

 

う う う う

うつ うつつ 

うつそみ うつらふ 

うつらひて

 

うつぼぶねとや にし ひがし

かぜにまかせて にし ひがし

 

むばらうばらや にし ひがし

あめにくたされ にし ひがし

 

ちりとちりぬる ちりぢりに

まなかのにはは うつのには

 

うつのにはにて 

あそびせむ あそびせむ 

あそびせむとや むまれけむ



うつのや峠の つたもみぢ

殺めた座頭の されかうべ

 

うろに籠めたが なんとせう

いつのまにやら うろのそと

 

かぜにふかれて くわらくわらり

両のまなこは ぐわらんだう

 

よもぎぐさとや しやらしやらり

たどりついたは うつのには

 

うつのにはにて 

あそびせむ あそびせむ 

あそびせむとや むまれけむ

 

梁塵秘抄

舞へ舞へ蝸牛

舞はぬものならば

馬の子や牛の子に

蹴ゑさせてん踏み破らせてむ

まことに美しく舞うたらば

華の園まで遊ばせむ







★茂みの浮揚 

留美 詞とりふね

折口信夫 死者の書 

 をモチーフに)

 

そのとき 僕は 僕を わすれた

石の柩石の壁 

つたういくすじの水

味もなく 舌に まつわる 記憶

伝説の剣は さびついてこぼれた 

 

これで何が 切れるというのか 

 

かのとき かれらは 僕を繫いだ

過剰な 声 たかくひくく重なり

 

それで何が 切れるというのか 

 

こうこう したしたした

こうこう したしたした 

 

そこに何が読めるというのか 

 

刑場へ ひかれてゆく 

僕の あしうら

わずかに 浮揚して 

滑るように すすんだ 

 

それで何が 贖えるとというのか 

 

こうこう したしたした

こうこう したしたした

 

池の対岸 茂みの向こうで

あなたは 本当は泣いていたのか

 

それであなたは 気が済んだのか





★化野(あだしの)その弐 Croustillant 詞とりふね 

 

そこら中が骨になる  

おどろけ今日も朝が来た 

ゆすらいろに色づきゆく  

めづらか骨のかたち

あてなる骨ののはら    

 

よそごとのようにながめ   

わづらふ具体に

サヨウナラ さらば    

 

踏めよサクサクサク

サクサクサクサク

来るべき世に

組みあがる

目にも新しきスキーマ 

 

そこら中が骨になる     

おどろけ今日も風が吹く   

ゆすらいろにまろびつどふ  

あさまし骨のあそび

あだなり骨のほかひ 

 

くろぐろ夜の désir machine

わづらふ器官に

サヨウナラ adieu

 

踏めよサクサクサク

サクサクサクサク

来るべき世に

組みあがる

目にも新しきスキーマ

 

★天界(ヴァルハラ)の花 

詞・曲とりふね

 

秋の空は高い 

冷えた雨に磨かれた 

髑髏(しゃれこうべ)の眼窩から

真直(ます)ぐ伸びる茎よ 

 

彼女のことならば 

他の男(ひと)に訊いてよ 

僕は忘れた

昨日は遠くだ 

 

機械の時間に

間に合うよう に 走ったよ 

君が急に止まるから 

僕は 転んだんだ 

慣性の法則

 

秋の空は高い

白く冴えて満ち足りる 

髑髏(しゃれこうべ)の眼窩から 

真直(ます)ぐ伸びる茎よ

 

秋の空は高い 

まるで死のようだ 

紺青に咲く 

天界の花よ 

今生に咲く 

ヴァルハラの花よ 

彼女のことを 

知って咲く花よ

僕は知らない

昨日は遠くだ

 







うつうつつ

うつうつつ(変成中) 詞とりふね

 


う う う う
うつ うつつ 
うつそみ うつらふ 
うつらひて


うつぼぶねとや にし ひがし
かぜにまかせて にし ひがし

むばらうばらや にし ひがし
あめにくたされ にし ひがし

ちりとちりぬる ちりぢりに
まなかのにはは うつのには

うつのにはにて 
あそびせむ あそびせむ 
あそびせむとや むまれけむ


ⓒ(黙阿弥)
うつのや峠の つたもみぢ
殺めた座頭の されかうべ

うろに籠めたが なんとせう
いつのまにやら うろのそと

かぜにふかれて くわらくわらり
両のまなこは ぐわらんだう

よもぎぐさとや しやらしやらり
たどりついたは うつのには

うつのにはにて 
あそびせむ あそびせむ 
あそびせむとや むまれけむ

 

ⓓ(梁塵秘抄
舞へ舞へ蝸牛
舞はぬものならば
馬の子や牛の子に
蹴ゑさせてん踏み破らせてむ
まことに美しく舞うたらば
華の園まで遊ばせむ