塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

萩尾望都「残酷な神が支配する」中沢新一「アースダイバー」

トーマの心臓 (小学館文庫)残酷な神が支配する (10) (小学館文庫)先週前半、たまたま借りてきて萩尾望都残酷な神が支配する」文庫本全10巻を読んだ。萩尾望都の作品はもちろんわたしの思春期に多大な影響を与えた作家であり、もっとも好きな漫画家だが、絵柄の荒れがどうしても受け入れられなかった(過去3回くらい大きくかわっているのよね。その度にショックだった。)のと、彼女の描くものは読まなくってもすごいのだというふたつの理由から、長いこと遠ざかっていたので、本当に久しぶりだった。
マーラー:交響曲第5番3冊読んでは寝しなにマーラーのアダージェットを聴くという異様なサイクルに、脳みそは、思春期のヴァーチャル恋愛モードで、ハチミツかコンデンスミルクのようにとろとろになってしまった。横顔のデッサンが乱れるのはかなり気になったものの、やはりモー様は、「究極の恋愛」の描き手である。途中からわたしの脳には名付けようのない快楽物質とともに「エロス&タナトス」「エロス&タナトス」の言霊が分泌され、螺旋状に上昇していった。ラスト10巻でマンガの中に「タナトス」の語が実際に出てきたときは溜息が魂といっしょに抜けていった。これはまぎれもなく1990年代の「トーマの心臓」だ…。ユーリ+エーリク=ジェルミ。オスカー+エーリク=イアン。時代が物語をより凄惨にしているが、芯にある「エロス&タナトス」の疼きとそこから昇華してゆくものの宗教的な美しさは変わらなかった。新作「バルバラ異界」買って読んでみようかな。ちなみにとても若い頃サイン会に行って、握手してもらったのは手塚治虫萩尾望都でした。



アースダイバーさて、そんなこんなで週が明け、本日は中沢新一師の「アースダイバー」を購入。帰りの地下鉄で読みながら、なんだろうこの感じ、と不思議な気持ちになる。わたしにとって、萩尾望都作品を読んでいる時のとろとろ感またはここちよい息苦しさと、中沢先生の文章を追っている時のとろとろ感またはここちよい息苦しさは、同じ感覚なんだなー。上品(ジョウボン)のエロス。永遠の少年少女にして深い母性。黄色いママチャリで縄文東京を駆け巡る中沢先生が、遺跡巡りのジェルミとイアンに重なってゆく…。梶井基次郎ならずとも二重写しの景色は、時折すごいものを私たちに見せる。ハチミツ脳の快感。