塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

千年王國「スワチャントッド」

http://sen-nen.org/suwachantodd/index.html
13日金曜日に観る。咳をするのがはばかられる芝居なのに、気管支の調子がわるく、マスクをして観劇した。
完成度やモチーフとなる音の扱いは、期待を裏切るものではなかった。北国の港町という空間というか、世界観の立ち上がり方は、さすがである。設定、人物造型。衣装などに、橋口幸絵さんの作品の神話性が感じられる。音を扱いながら芝居を進めて行くための役者さんたちの訓練は、想像を絶する。
ただ、いくつかの橋口作品で感じたことだが、性的な描写(今回は、もちろん「音」が強調されたもの)の生々しさは、あれは、全体にとって必要なものなのか。わたしはあの性描写でいつもすこしひいてしまうのだ。生々しさがよい方にはたらいているようには感じられないのだ。橋口さんの個人的な問題が個人的な問題のまま示されてしまった感、それを役者という他人に無理に演じさせている感がある、それが微妙に気持悪いのだろう。
話の決着のつき方は、相当にベタだった。素晴らしい企図と、それに応える役者さんたちの情熱が感じられるだけに、あの物語の収束はいかにも残念であった。
私がファンである柴田智之君の役は、暴力的な要素が大きく、柴田君の芝居が壮絶なだけに、観ていて苦しいような感じだった。公演パンフに、「芝居をやめようと思った。酷く疲れてしまって、けれども云々」というコメントがあり、その純粋な精神状態を想像すると、これもまた苦しい。個人的には、もっと柔らかいところの多い役を見たいものだ。客演のかとうしゅうやさんの少し抜いた芝居に救われる。ただせっかくの調停的な存在なのに、あの、声のラブシーンがあるために、役のよいところがちょっとだけ欠けてしまった。客演の岩田雄二さんは深めのきれいな声だった。
帰りに「イザナキとイザナミ」のDVDを購入した。
http://sen-nen.org/izanaki_to_izanami/index.htm
いや、それにしても。近頃とみにいろいろな感覚が鈍っている。感じる力、感情を動かす力がひどく落ちている。もともといろいろなことを深く感じられない人間だという自覚はある(往々にしてすべてのことに虚無感を感じてみたり)が、老化とはこういうところからも来るのだろう。