塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

イントゥ・ザ・ワイルド

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

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いたいたしい、痛ましい映画だ。もうひとつの「車輪の下」。愛される安心、存在の認証をバックグラウンドに持てない不幸。都市からも、自然からも疎外される身体。真の「ワイルド=荒野」は、真のイニシエーションは、「死」を用意していた。主人公はそこをくぐり抜けてその先(再生)に行くつもりだったが、死の罠におちる。循環する時間にとどまることを拒否し、その輪をまっすぐにつらぬいて向こう側に行こうとした無謀。死ぬ気などまるでなかったのだろうが、どこかしら緩慢な自殺にも見える。青年を喪った家族の欠落の時間のライン(妹の語り)と、欠落した青年(彼もまた家族を喪っている)のラインが呼び合いながら結ばれることなく並行する。家族の了解を得るため映画化までに10年かかったということだが、映画化されて家族の傷はさらに顕在化するということはなかったのだろうか。