塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

「魂をはこぶ船」プロイスラー

魂をはこぶ船―幽霊の13の話 (プロイスラーの昔話)
まず題名がすてきです。
「大どろぼうホッツェンプロッツ」「クラバート」の作者
プロイスラーがあらたに語るドイツの幽霊譚。ドイツの森や墓地のぞっとするような暗さの中に
どこかユーモラスなところがあり、たのしく読めます。


首切りの刑で死んだ追いはぎの幽霊たちが自分の首を玉にして、足の骨でボウリングをする話は強烈。


家から小さい幽霊(ポルターガイスト)を追い出すのに
ローマ教皇から杖をもらってきて庭に植えたのが根をはって木になる話では
赤坂憲雄「境界の発生」で取り上げられていた各地に残る聖なる杖の伝説を思い出しました。
境界の発生 (講談社学術文庫)
洋の東西問わず同じような話はよくあるものです。


「魂をはこぶ船」(この題名にひかれて買ったわけですが)では別役実の「黒い郵便船」を思い出しました。
http://homepage2.nifty.com/torifune/kuroiyuubinsen.htm


一番好きだったのが「ちびすけ、こっちへおいで」
洗礼を受ける前に死んでしまった天国にいけない子どもたちが
地底のペルヒタ女神につれられて地上に出てきたとき、いちばんちびの子が面倒見のいい農家の若者に
「フーデルヴァッフル(ちびすけ)」と声をかけられ、「名前をくれた」といって天国に行きます。
とても優しいお話でした。


絵を描いているのは愛するスズキコージ氏。
不思議な空気をいっそう濃くしてくれたことはいうまでもありません。