塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

高橋巌「神秘学入門」

神秘学入門 (ちくまプリマーブックス)
なぜこの本を買ったかわからない。でもよく考えたらこの著者の本が二階の本棚の奥の方にあるかも。「シュタイナー教育入門」。誰かにぜひ読めと言われてもらったのだ。
読んだ記憶はない。


怪しい本だ。怪しい本は好きだが、この怪しさはなじめない怪しさだ。美学とか人智学とかの本であるらしい。「受動ヌース」とか「能動ヌース」とか「アストラル」とか「エーテル」とか出てくる。ちょっとこわい。

リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]
エーテル」と言えば、岩井俊二の「リリイ・シュシュのすべて」を思い出す。あれはかなり好きな映画だ。DVDを買おうか迷っている。全編を彩るドビュッシーの「アラベスク」が酷薄な感じをいやがおうにも高める。あれは神秘学の映画だったのか???



好きなところがなかったわけでもない。
たとえば、シュタイナーの講演「芸術の本質について」。芸術の本質について詩的なイメージが展開するくだり。踊りの精やミミックの精や音楽の精が現れて自らのことを語る。それとワーグナーの美学。「美を体験しようと思うなら、その美を何らかの意味で普遍的なものと考えて、そこに自分を関わらせていく、という態度をとってはならない。」「美を考えるのなら、自分という生命存在が先ずあって、その自分の中に美が流れ込み、自分だけの美の形がそこに作られるのでなければならない。(筆者)」「ある体験が自分の中で強烈な体験になりうるためには、精神ではなく、「生命」が自分の中にどれくらい強く体験できるかにかかっている」このあたりは、ピンとくる。「魂に欠乏感を持つ人間」という意味においてのワーグナーの「フォルク」にも何か感じるものはあった。でも、その後の「大東亜戦争」の話になるとやっぱりちょっとひく。これってちくまプリマーブックスだよね? 中高生向けだったよね…。


風の丘を越えて [DVD]
この本の中でたいへん興味をもったものは、韓国のパンソリ(太鼓の伴奏で長い物語をする芸能)の映画。「西便制(ソピョンジェ)」(邦題「風の丘を越えて」)。父にパンソリを教えられた少女がめしいて放浪の後、「シキムセ」の境地を体得するというはなしだそうだ。これはちょっと見てみたいかな。



ちくまプリマーブックスはオンナコドモに読みやすくソフトカバーで大きさもキモチいい、好きなシリーズだが(阿部謹也網野善彦吉本隆明鷲田清一など)、とにかくこの「神秘学入門」はなんだかびっくりした本だった。ところで、プリマーブックスとどう違うのかわからないが、ちくまプリマー新書というのがでるらしい。もう出たか?やはりオンナコドモ向きらしい。内田樹先生のも出るようだ。