多田智満子遺歌集「遊星の人」
朝日新聞に紹介が載っていた。彼女を知ったのは、中学1年の頃だ。澁澤龍彦の「エロスの解剖」のなかに紹介されていた「光よ海の哄笑よ 若い時間は虐殺された ゆく人よ ラケダイモンの国人に伝えてよ…」(正確ではないかもしれません。)という印象的な詩句に惹かれた。透明、静謐、エロス、遠い時空。その後、訳書のヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト (白水Uブックス)や、詩集「蓮食いびと」(だったか?)を買った。10代のあこがれで手に入れたのであって、しっかり読み込んだわけでもない。新聞に紹介されていた歌にも、あの透明、静謐の感はあった。
みどり濃きこの遊星に生まれ来てなどひたすらに遊ばざらめや
映画「オルランド」のラストシーンを思い出す。
癌告知は受胎告知にてありしかなわが「子の宮」に癌を祀りて
癌細胞も自らの肉体に来訪した客人、神とする、はるか高みからおりてくるようなさえざえとした遠い視線だ。この遺歌集は欲しいな。高橋睦郎編集とのこと。