ETV特集「ユーリー・ノルシュテイン」

かねて気になって手に入れたいと思っていた「霧の中のハリネズミ」の作者、ユーリー・ノルシュテインの特集。40歳から24年間かけてまだ制作半ばというゴーゴリ原作の「外套」の一部もみることができた。人間の顔や手、風に翻るコートなど、細部の突き詰め方は言葉では言えないすごさ、ただただ口をあんぐりして見ていた。作品にあんな風に向かう人は、おのずと、哲学者や宗教者の様相を呈してくるものなのだなぁ。「ほんとうのことを急いで理解することはできない」などのいくつかの言葉や、一茶、芭蕉の俳句についてのコメントもとてもよかった。若者たちの、「過去のすばらしい作品から学ぶことがない、世界を見ない、自分の殻に閉じこもり、頭の中だけで作品をつくる」あり方には危惧をおぼえているようだった。ノルシュタイン大賞の審査発表前の若者たちとの対話で、「この中でタイタニックを見た人?」という質問に手を上げた数人に「あんな映画ばかり見ていたら沈んでしまいます。」と言ったのには、笑ってしまった。イッセー・尾形との対話もおもしろかった。川本喜八郎の折口信夫「死者の書」の人形アニメが制作中であることはサイトで見ていたが、今日画面で見てみると、やはりどうも自分の「死者の書」のイメージとはだいぶんちがう。ノルシュテインさんはこれが日本というようなことを言っていたが、あれは外国の人が抱くイメージの限界なのでしょうかね。
http://www.kihachiro.com/project.htm