妖怪大戦争(まだ観ていない人は読まないでね)
日中を避け、ゆうべ観てきました。はじめから終わりまで、笑いっぱなしでした。こてこてのRPG的な筋を、絶えずパロディ化するようなセリフや間があり、その二重の文脈がおもしろかった。東京都庁や東京都知事もいいようにおちょくられていました。妖怪的なずらし、アイロニーとでもいいましょうか。
阿部サダヲのおなじみのテンションの河童、忌野清志郎のぬらりひょんの(いつもの感じの)ゆるい造型が笑わせてくれます。神木隆之介くんが驚く(驚きっぱなしの)演技もいい。豊川悦司は爬虫類のようでとてもハマっていました。菅原文太のぼけ爺さんはきわめて自然。「怪」編集の佐野史郎と宮迫博之はもともとの顔がもう水木キャラですね。そこですでに笑える。子どもにむけて作られた作品ながら、鳥刺し妖女アギの栗山千明と川姫の高橋真唯が(衣装も含めて)それぞれにエロティックです。川姫はちょっと由美かおる入ってます。そのことで言えば、神木くんの衣装替えのシーンもおなじくらい危険でした。
水木しげる先生やアリャマタコリャマタ荒俣宏さんの、「妖怪は戦わない」というコンセプトどおり、映画の中で、妖怪は戦いません。ただ浮かれているだけ。それを崩さなかったのは立派だ。本質的に怠け者でいいかげんな妖怪というものにますます親近感をおぼえます。
映画を観る前に清志郎と井上陽水の歌う(二人は初デュエット)主題歌のCDを、水木先生が描いた二人の似顔絵にひかれ、ジャケ買いしてしまいました。三池監督の恥ずかしい歌詞さえも、ちゃんと曲にしてしまう清志郎がすてき。パンフレットには、なんとみうらじゅんLOVE&PEACEが、まじめにふざけたような、内容があるようなないような、コメントを寄せていました。
挿入歌「教えてジィジ」より 三池崇史作詞
泣いたってダメさ
誰も助けちゃくれない
小豆を食って 食って
自分のことは自分でやりな
ロックの基本はLOVE&PEACE
小豆の基本もLOVE&PEACE
甘さを抑えたLOVE&PEACE
という歌詞そのままの映画でした。怒濤の感動はありませんが、観る人の趣味によってはかなり愉快に楽しめると思います。ふつうにコワイのを求める人にはおすすめしません。(「件くだん」は気持ち悪かったけど。)続編に繋ぐようなラストではあったけれど、はたして続編が可能なのかしら…。
話はそれますが、こわい映画といえば、わたしが今までこわかった映画ですぐ思い出すのは、エドガー・アラン・ポー原作のオムニバス映画、「世にも怪奇な物語」。3本めのテレンス・スタンプが主演している作品です。監督はフェリーニ。「本当にこわい」ってこういうものだと思う。2本めはアラン・ドロン主演の「ウィリアム・ウィルソン」で、1本めは、ピーター・フォンダとジェーン・フォンダの兄妹共演で、馬が出てくるもの。