塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

「ケルト巡り」河合隼雄 ぬらりひょん先生、ケルトをゆく

ケルト巡り

ケルト巡り

少し古いものだが、「私家版・ユダヤ文化論」を買いにいったとき、ひょんと見つけて。NHKの番組の取材旅行から生まれた本。久々に読むケルト本であり、河合本である。河合先生はあいかわらずのぬらりひょん(妖怪)ぶりだ。表紙のイラストも妖怪ぽい。終始「そういうこともあるかもわからんな。」というスライム状の態度で、「ぬらりひょん先生、ケルトをゆく」というタイトルが合うと思う。著者も書いている通り、スタッフとのやりとりからの口述筆記によって作られていて、流れが全体にゆる〜くケルトのぐるぐる状。昨日のウチダ本のサクサク感のあとの、このゆるゆるは結構きもちがいい。現地の「ニュー・ドルイド」の人たち(大学の先生など)や開業しているウィッチとの対話、レイ・ラインとダウジングの話などがおもしろかった。ドルイドの文献などもちろん残っていないので、ニュー・ドルイドは、ネイティヴ・アメリカンや、場合によってはユダヤ教カバラ、エジプトなどの考えや儀式を取り入れたりしているという。レイ・ライン(太古からの遺跡、塚、整地といわれる場所が一直線状に並んでいること)のところで、五木寛之が「日本の土地には、いわゆる『経絡』のようなものがある」と言い、著者がレイラインのことを教えてあげて、お互いに喜んだ、という話が出てきた。またまた蟲師の「光脈筋」を思い出したりする。「アース・ダイバー」とか。「ゲニウス(守護霊)・ロキ(場所)」という言葉も出てきた。土地自体が、精神というか魂を持っているという考え方。風水ですね。ある建築家が「私たち建築家は単に建物を建てるのではなく、ゲニウス・ロキの声を聞きながら建てたいという気持を持っている」と言ったという。最近、自分に関わる場所でも、新しく建てる作業があったが、ゲニウス・ロキの声を聞いて建てられたのか、かなり不安が残る。以前あった中空構造が外でも中でも損なわれた感じがするのだ。そして、その「塞ぎ」は、建造物の部分でも、システムの部分でも平行して進んでいる。くわばらくわばらっと。中空構造(空虚な中心)といえばニュー・ドルイドのリーダーについて、こんな記述があった。

グラストンベリーでの儀式には、「始めます」とか「終わります」といった進行役を務めるリーダーが存在した。「チーフ」と呼ばれているという。そのチーフはどのように選出されたのか訊くと、自然に決まるのだと言う。「どんな人ですか?」と問うと、この人は人の話を聞く才能を持っており、それをみなが評価したのだという。これはとても興味深い話だった。(私も興味深いです@とりふね)
というのは、われわれが考える欧米のチーフやリーダーとは異質だからである。欧米のリーダー像は、まさに「リードする人」であって、「こういうことをやっていこうじゃないか」と方向を示す力があり、決断する力のある人たちだった。ところがドルイドの儀式のチーフは、人の話をよく聞くことのできる人だという。このチーフの職業は、いわゆる実験心理学とは異なるトランス・パーソナルな心理学者のことだった。
私は近くから、このチーフの行動を見ていたのだが、彼の起こした行動といえば、「始めます」と「終わります」のかけ声をかけただけである。あとはほとんどなにもしていない。(善哉。これよこれ。「極意」ですね。@とりふね)ところが、彼がみんなのことをよく聞き、彼がそこにいることが大事なのだという。私は、「日本の神話の中空構造」ということを言っているが、(それは読んだけれど、あんまりおもしろくなかった@とりふね)この場合は中空的なチーフである。リードはしないが、みんなをまとめていく力を持っている。そういうチーフをいただくグループがヨーロッパに出てきているということは、とても興味深い。p105

極意、極意。どうですか、そーぶくん。(と、とつぜん召喚する。召喚魔法。)そーぶくんもニュー・ドルイドのチーフになれそうなんですけど。ぐふふ。

ウィッチ(ワイズ・ウーマン)のところで、精神分析の、意識を通じて無意識に働きかける作業と、ウィッチの、タロットを使って相談者の無意識に触れていく直接的でダイナミック(ときに危険な)な作業が比較されていたのがおもしろかった。自分もタロットは3スーツほど持っている。ライダーズ・タロット(右上の写真)とアクエリアン・タロットと007のタロット。変にいじるのがこわいので、あまり占ったりはしていない。でもカードは見ているだけで飽きない。三越の歌留多館やタロット館のサイトは好きでたまにのぞく。
http://only-you.mitsukoshi.co.jp/tarot/index.asp
書きながら、イタロ・カルヴィーノの「宿命の交わる城」をずっと前に途中まで読んでほおっていたのを思い出した。(思い出してばっかり!!)タロウ(タロット)のスプレッドから物語が展開してゆくものだ。続きを読んでみるかな。でも、あれ、すぐ眠くなるのよね。

宿命の交わる城 (河出文庫)

宿命の交わる城 (河出文庫)