チェンジリング ネタバレ注意
しっかりした組み立て、ていねいなつくり。エンタテインメントとしてもきっちり仕上がっている。アンジェリーナ・ジョリーの眼と唇がものを言う。警察の暴力とそれを打ち崩そうとするプレスビテリアンの牧師(ジョン・マルコビッチ)とその一派。アンジェリーナ演ずる母親は自分の思いに関わらず、警察の非道を暴く中心となっていくわけだが、二つの力の拮抗、公の図式からどうしてもこぼれてしまうものを、アンジェリーナのもの言わぬアップが掬いとる。 精神病院から救い出された売春婦とかわす視線が、社会的な物語からこぼれおちる人の命を映し出す。先日の村上春樹の「壁と卵」のことを思い出した。取り替え子の少年の不気味さは、ケルトの伝説チェンジリングの妖精の取り替え子の醜悪さそのまま。警察の横暴・圧力、精神病院での強制的な治療は想像の範囲内ではあるが、それなりにおそろしい。「真実」のもろさ、こころもとなさが痛烈に描かれていた。後半の景色の変わり方とそこからの映像の重ね方も、堅固で、饒舌でないところがいい。共犯の少年が土を掘るシーンの上からのカメラが罪のおそろしさを冷たく描いて印象的だ。
あ、今これを書きながら「クルーシブル」という映画のことを思い出した。まったく違う話なのになんでだろう。真実が真実として着地しないおそろしさと、その中で何が真実かわからなくなっていくおそろしさ、ということか。うろ覚えだったが今確認したらウィノナ・ライダー主演だった。アンジェリーナとウィノナと言えば「17歳のカルテ」のコンビだなあ。
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