茂みの浮揚
茂みの浮揚 曲留美 詞とりふね
そのとき 僕は 僕を わすれた
石の柩 石の壁 つたう いくすじの水
味もなく 舌に まつわる 記憶
伝説の 剣は さびついて こぼれた
これで 何が 切れるというのか
かのとき かれらは 僕を 繫いだ
過剰な 声 たかくひくく 重なり
それで 何が 切れるというのか
こうこう したしたした
こうこう したしたした
そこに何が読めるというのか
刑場へ ひかれてゆく 僕の あしうら
わずかに 浮揚して 滑るように すすんだ
それで 何が 贖えるとというのか
こうこう したしたした
こうこう したしたした
池の対岸 茂みの向こうで
あなたは 本当は 泣いていたのか
それで あなたは 気が済んだのか