塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

最近読んだ本メモ

読んだらすぐに書かないと、読んだ先から忘れてしまう。悲しい。

ダライ・ラマが語る般若心経

ダライ・ラマが語る般若心経

色即是空空即是色の意味が少しわかった気がする。DVD(英語&字幕)を観て、直接話を聴けるのがやはりわかりやすい。
「里」という思想 (新潮選書)

「里」という思想 (新潮選書)

この人の文章は目にする機会が多いのだが、はじめてまとまったものを読んだ。インターナショナリズムではない、グローバリズムが生み出す現代人の不安について静かに真摯に語る。

p203こうして争いは肯定され、それが正義を守るための闘いと位置づけられながら、たえず勝利し続けるための戦略を練らせるようになった。
 この精神的態度を基礎にして、経済や政治、軍事の分野でも、勝利し続けることが真理を守り、正義を守ることだと考える、二十世紀的世界がつくられていったのではなかったか。
 こんな思いをいだきながら、二十世紀後半の哲学は、次第に、世界のどこにでも通用する「普遍的な真理」はないと考え、思想はすべてローカルなものであると考えるようになってきた。いまでは思想の世界では、「普遍主義」という言葉は、否定的な響きを伴ってしか、使われなくなっている。そして、このような転換が、「人間的なもの」の虚しさを基礎におく、東洋思想への傾斜を深めさせたのである。人間の本質は無であると、今日ではどれほど多くのヨーロッパの哲学者たちが考えていることだろうか。
 ところが、ニューヨークとワシントンのテロから三カ月余りの動きは、ひと昔前の論理の展開でしかなかった。アメリカは自分たちの真理を正義として世界に押しつけ、その手段として、経済、政治、軍事力を動員する。そうすればするほど、テロリズムにしか活路をみいだせなくなる人々が生まれた歴史を、顧みることもなく。

相変わらずの対談好き。やはり対談の妙は、そこにおきる「ずれ」。梅原猛翁は、基本、人の話を聴いていません。ぜーんぶ自分の文脈にひきつけてしゃべるしゃべる。意見は対立するところがあったけれど、いちばん対談としてかみ合っていたのは、日高敏隆先生との話だったような。中沢さんとは「日本人は思想したか」での吉本隆明氏との鼎談以来(このときも梅原先生が一人暴走)で、そのとき中沢氏の言ったことがわからなかったが、後でわかったというあたりがおもしろかった。中沢氏が日本海沿いを歩くと行く先々で「一週間ほど前梅原先生がここを歩かれました」と言われたというのも愉快だった。油日神社蔵「ずずい子さま」その他怪しい写真も満載。アイドル中沢氏の写真、さすがにお年をめして熟した感。
松井氏の発言もおもしろかった。

p133〜134
松井 例えば我々が持っている魂という概念は、結局、関係性だと思います。「関係性」というのは物理学でいうと「力」ですね。(中略)ものとものとを関係づけるのが物理学では力と考えればよい。その力を媒介するものがある。それが何であるかと言うと、それは基本的に粒子です。ただ質量を持たない粒子なんです。(中略)それを拡張して考えれば、こんなことは物理的にはあり得ないのだけど、例えば、魂という概念をそんな風に捉えるなら、魂は人間や動物の間の関係性を粒子的に捉える概念として出てきたとも考えられるように思うんです。そのように考えれば、結果として確認できる時空が広がります。
梅原 今の方がかえって時間の視野が狭くなった気がするな。
松井 そうですね。特に経済などがそうです。"今"しか見ない。その意味では経済学は、ある種一番動物的な学問ともいえる。

日高氏との話でローレンツとユクスキュルの話が出てきた。コンラート・ローレンツの方は読んだが、ユクスキュルの「生物から見た世界」は読んだことがなく、興味を持ったので注文した。
全く異なる分野の人との三つの対論だが、随所に対称性(中沢氏の語だが)の問題が出ていると感じた。

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)

そうそう、もう一つ気になったのは、この本をまとめている西川照子という人のことだ。最後に、「続・異能者たちの宴」という文章を載せているのだが、ものすごく巫女的な直観力を感じる。興味津々。
この対論集、1は山折哲雄氏も入っているので、梅原翁のファンではないが読んでみたい。

入門 たのしい植物学―植物たちが魅せるふしぎな世界 (ブルーバックス)

入門 たのしい植物学―植物たちが魅せるふしぎな世界 (ブルーバックス)

表紙が気に入って買った。キノコ好きのわたしには、キノコをガラスビーズの床で育てるなど興味深い内容がたくさんだったが、最後の遺伝子組み換えの章は、シロートには怖かった。マツタケとシイタケのプロトプラスト(細胞壁をのぞいたもの)を融合させ、二者が上手く融合したものを取り出すために、農薬や抗生物質に耐性があるという性質を与える方法の説明があったが、農薬や抗生物質に耐性があるというところでドン引きしてしまいました。
植物のコブをつくるアグロバクテリウム・ツメファシエンスという細菌の話を読んで、以前、カクテルという薔薇の葉の裏にできた虫えい(虫コブ)のことを思い出した。虫コブの細胞はどうなっているのかなぁ。kyoshidaさんにうかがえばわかるかな??
http://amenotorifune.hp.infoseek.co.jp/20019161.htm