塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

IKUちゃんに贈りたい、「ヒメネス」長田弘

ちょっとした偶然といった感じで、長田弘の詩「ヒメネス」を目にした。「世界は一冊の本」という詩集の中の一編だ。読みながら、落涙。どうもしっくりくる詩に会うといつでもどこでも落涙するのがわたしの特技らしい。年があがって頭のねじがゆるんでおるのかな…。長田弘の詩は、けっこう技術的な操作が先に感じられて、あまり入り込んだことはなかったのだが、これはちがった。美しい詩だ。ヒメネスは有名な「プラテーロとわたし (岩波文庫)」の詩人。この詩を読んで、2月24日のIKUちゃんに贈りたいと思った。


 ヒメネス


髭を生やした詩人が、ロバにいった。
雨の中のバラをごらん。バラの中に
もう一つ、水のバラがある。揺すると、
かがやかしい水の花が落ちてくる。


優しい目をした詩人が、ロバにいった。
子どもたちをごらん。鏡のカケラで
日光を集めて、日陰にもってこようとしている。
信じていい。一日は単純で、そして美しい。


いつも喪服を着ていた詩人が、ロバにいった。
人びとをごらん。人生の表と裏を眺めながら
ときどき心の暗がりに、苦しい思いを捨てて、
みんな勇気をもって、年老いてゆく。


(第4連略)



著作権の問題があると思うので、第4連は書きたい気まんまんでも書かないでおきますが、IKUちゃん、(また、みなさん)ぜひ本屋で立ち読みしてみて。(または図書館で借りてみて。)たいてい見つかります。そして、またパイネかバイーアかどこかで遭遇してお話ししましょうね。プラテーロとわたし〈春・夏〉 (フォア文庫)プラテーロとわたし 秋・冬 (フォア文庫)