塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

野ブタ。をプロデュース

野ブタ。をプロデュースちょっと気になっていたので、借りてきて読んだ。タイトルやキャッチから、愉快で楽しい青春小説かと思っていたら、浮遊する思春期の自己像が虚無感たっぷりに書かれていた。文体は軽口で、それがいっそう虚しさを感じさせる。「野ブタ」をプロデュースする過程で、主人公桐谷の「着ぐるみ」が気持ちよくはがれていくのかと期待したが、ラストはあくまでブラック、「世にも奇妙な物語」のエンドロール、タモリのナレーションが流れてきそうだ。(あのドラマにしたらぴったりだろう。)その程度、な感じ。読後感はなんとなく気持ち悪く、買わなくてよかったよ、と思った。確かにここに書かれている心理に共感する若者は多いのだろう。(わたしはまったく共感するところがなかったが。こんな人付き合いしない。)でも「あ、わかるわかる」だけで終わるだろうな。あとがない。こういう小説にどれほどの意味があるのかな。現代の一部を切り出したってこと? 苦悩する(そして、ちゃんと苦悩できない)若者を簡単にハッピーエンドでオチをつけることなく描き出したことが一つの価値?