塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

北村想作 柄本明演出 東京乾電池 寿歌 @ シアターZOO 

ネタバレありです。
 

 ZOOで 柄本明演出 寿歌 を観てきた。
 たくさん観たわけではないが、80年代に観た芝居のなかでもひときわ心にのこったのが、加藤健一事務所の 寿歌 だった。ゲサク加藤健一キョウコ熊谷真美ヤスオ星充。道新ホールか市民会館か教文だったか。たしか演鑑のプログラムだったと思う。たぶんその後だと思うが、本多でプロジェクトナビの 想稿 銀河鉄道の夜 も見た。劇団 青い鳥 の芹川藍さんがジョバンニを演じたものだ。2本しか見られなかったが、北村想さんの脚本は優れた、感動的なものとして強く印象に残った。
 

 さて今回の 寿歌。手錬の演出家・役者さんによるもので、初めて観る人には瑕疵はなかったのだろうが、やはり私の中で、キョウコが17歳〜20歳くらいのイメージだったのがひとつ抵抗感になった。キョウコ役はそれは上手な役者さんなのだが、ZOOというハコの規模もあり、残念ながらあまりにも実年齢と脚本がずれるように思った。キョウコはあくまで天真爛漫な幼女のようなイメージ(肉体と声)でなければ、寿歌 という作品で笑いの中にじわりと滲出してくるような悲哀が完成しないと感じた。ゲサク役はネイティブ関西弁のかろみと身体の脱力と緊張のメリハリがすてきだった。ヤスオ役は、柄本さんのは見ていないのでわからないが、一緒に行った人と話していてほかの役者さんとの年齢バランスで言えばよかったのではないかという結論。ちょい中2病的なキリストでそれなりにおもしろかった。
 

 あらためて北村想氏の言葉やイメージのうつくしさや哀しさには心を動かされた。ゲサク「あかんわ。郵便局もうあれへん。手紙みたいもん届けへんで。」とかヤスオ「あの、私、何となくあてがないんです。」とかゲサク「町はどこでもこんなもんです。町の気配の中に空気があるだけです。」キョウコ「そうや。ラジオがうまいこと鳴らへんし泣いてんねん。」などなど。ごくフラットな言葉にすごい強度がある。キャスティングに若干の違和感を感じつつも、ラストシーンでは役者さんのリヤカーを引く動きと風景とBGMのピーナッツの歌の全体が迫ってきて、やはり落涙し、とめるのに苦労した。北村想さんの作品を観たことが無い人はぜひ。
 

 アフタートークは、とばす北村さんとおさえてまとめる柄本さん。おもしろかった。質問コーナーでは質問してみた。(こういうの初体験。)「80年代に加藤健一事務所のものを観ましてあのときは大きなステージでしたが、書かれたときは舞台の大きさは想定されたのですか。」「役の年齢というのは想定されていたのですか。」この作品は当初稽古用に書いたもので、その辺に限定はなかったとのこと。終わって、ほしかった 脚本 を売っていたので購入し北村さんにサインをいただきました。(柄本さんのも欲しかったが、そこはちょっとちがうかなと思い我慢した。)


↓80年代本多劇場札幌で観た 想稿 銀河鉄道の夜 のパンフ


↓サインもらった。

寿歌[全四曲]

寿歌[全四曲]