塗籠日記その弐

とりふねです。ときどき歌います。https://www.youtube.com/user/torifuneameno 堀江敏幸・宮城谷昌光が好きです。

千年王國「楽園」ネタばれあり

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昨日、東区のたまねぎ倉庫で初日を見て来ました。アンケートにも書いて来ましたが、橋口幸絵女史若いときの脚本というだけあって、甘酸っぱい青春のベタさにあふれていました。新しく入った役者さんも多かったようで、はじめのうちはかなり素人っぽさが出て、台詞もききとりにくく、ちょっと入りづらかった。また、後半のストーリーは冗長の感がありました。人が死に過ぎだしね。3人も死ぬと、どうも子どもっぽい感じがしてしまう。


けれど、それらを差し引いても、太郎役の柴田智之さんの演技、色気には本当にぐらぐらきました。あの指や首の動き、ゆらぎの美しさ。このあたりで観ることができる中では、稀有な役者さんだと思います。そういうふうに柴田さんを生かすのは、やはり橋口さんのアイディアと言葉と演出なのでしょう。「呼ぶな、俺が呼ぶ」など、随所にはっとする言葉がありました。柴田さんを観るためだけにもう一度行きたいくらいです。「匂い」をモチーフにする橋口さんの詩的なセンスとそれを料理してゆく手際はとてもすてき。柴田さん自身のつくる芝居を見た事がないのですが、どちらがいいのでしょうね。私の予想では、橋口さんの言葉を語る柴田さんの方がいいのではないかしらと思う。柴田さんは「巫祝ふしゅく体質」の、透明でエロティックな役者さんです。この地方都市でこういう人を生で見られるのは嬉しいです。



村上水緒さんは好きな女優さんですが、今回のような役はどうだったのでしょう。美輪明宏がやったらという役ですし、後半のストーリー展開の中で、役そのものがちょっと陳腐になりかねないものだったので、気の毒な感じがしました。後半の冗長さは、太郎(柴田さん)と対峙するべきカゲロヲという人物が、柴田さんの太郎に比して、あまりにも小規模というか影がうすかったこともあると思います。下手な役者さんではなかったと思うのですが…。インターミッションの演奏はにぎやかで楽しく、フェリーニの映画を見ているような気分になりました。昔々のテント芝居の趣も。映画についての映画とか芝居についての芝居という表現は、構造自体もおもしろいですね。合間に流れる映像もすてきでしたが、芝居に映像が入ると、ときとして生の役者より映像のほうに力を感じてしまう事があるので、難しいですね。



柴田さんは絵も描くのです。アンテナにブログを入れてしまいました。